
5階のベランダのすぐ前に立つクスノキが、
ごうごうと吹く風に揺れていた。
わっさわっさと腕を振り回して、
ざざっざざっと、波のような音をたてていた。
風がうなる。
気温があがる。
気圧が、うずを巻いている。
H氏の飼い猫は、
気圧がかわると、胃潰瘍になるのだという。
胃痛を訴えて(どうやって訴えるのかわからないけれど)
何度も何度も吐くのだという。
かわいそうに。
しかし、かく言うあたしも気圧の変化は苦手なのだ。
胃潰瘍にはならないけれど、
ときには気管支が狭まって、
ひゅうひゅうと風のような音をたてたり、
ときにはコメカミが膨らんで、
のぼせたみたいになったりする。
そう、コメカミがふくらむのだ。
ぷくぅっと。ずきずきと。
うそじゃない。
ほんとの話し。
もうすぐ夜が明けようというのに、
まだ風が鳴っている。
ごうごうと唸っている。
頭が、熱い。
コメカミが、脈をうっている。
気圧のうずまく青い夜明け。
H氏の猫は、どうしているだろう。
