
一歩、外にでたとたん、
香っている。
キンモクセイが。
こんもりと繁るその木に近づいてみれば、
小さな金色の丸い粒。
昨日、見あげたはずなのに。
確かめたはずなのに。
つぼみなどなかったはずなのに。
素知らぬ顔して、
キンモクセイが香っている。
甘やかに。
まだ固くつぼんだまま。
ひっそりと物陰にいたオンナが、
ふいに声をかけてきたかのように、
目をふせたまま、
あたしはここよ、と、呟いている。
あたしを見て、と、放っている。
屋根の上のからすが、
声もなく嗤う白昼夢。
キンモクセイが
香っている。
